【関西学院大学】「地球異変と私たちの未来」をテーマに「復興・減災フォーラム」開催
Facebook Tweet LINE 各地の支援団体や学生らが意見交換・提言
地震や水害などが相次ぐなか、過去の被災地の経験やその中で得られた知恵を共有しようという「2022年復興・減災フォーラム」が、1月8、9日の2日間、西宮上ケ原キャンパスの関西学院会館で開かれました。関西学院大学災害復興制度研究所が毎年開催しているもので、今年は、中国やドイツなどでこれまで経験したことのないような豪雨災害が発生したことをふまえ、「地球異変と私たちの未来」をメーンテーマに、今後、私たちはどのような戦略を描けばいいのか等について論議しました(日本災害復興学会共催、朝日新聞社後援)。発言者や講師の一部はオンラインで参加し、2日合わせて、延べ約210人(Zoom聴講者も含む)が聴き入りました。
初日の8日は、「地球異変に立ち向かう~若者の挑戦・復興への課題」をテーマにした全国被災地交流集会「円卓会議」。被災地でボランティアに取り組む学生・生徒やNPO関係者ら約30人が話し合いました。第1部の若者円卓会議には、水害の被災地で活動する熊本や佐賀のグループと、兵庫県から支援する関西学院大学、神戸大学、西宮今津高校の学生・生徒が参加し、それぞれが、九州や東北などの被災地で、災害後の片づけや住宅・公民館の修復、オンラインを含めた被災者との交流などに取り組んできたことを報告。コロナ禍での活動について、熊本学園大学の学生グループの代表は「できないことなんてない。どうやったらできるかを重視する」と強調。福祉や工業を学んだことが現地で生かせている、学校で学べないことを経験できる、高校生・学生がかかわるだけで被災者に喜んでもらえるといったことも語り合いました。
第2部の「豪雨災害からの支えあいと復興」には、被災地で活動してきた奈良、佐賀、熊本、広島、兵庫、栃木の関係者が出席。「報道などで注目されない被災地ではボランティアが来てくれない」といった声が上がり、災害発生時にボランティアが偏ることについて論議になりました。2019年と21年に同じ地域で豪雨災害が発生した佐賀県武雄市の支援団体の代表は「社会福祉協議会のボランティアセンターの近くに、民間のセンターを作った。来てくれた人を逃がさないために。昨年は民間団体のネットワークを作り、コロナ禍でもルールに基づいて活動した」と説明。2020年に球磨川が氾濫した球磨村の団体代表は「ボランティアや支援に関する情報共有のプラットフォーム、ネットワークがほしい。SOSを出せる力、受援する力をつけたい」と訴えました。一方、広島の水害と時期が重なり、ほとんど報道されなかった兵庫県丹波市のグループのメンバーは、被災者の人たちへの炊き出しについて、並ぶのではなくレストランで食事をしているように席に座ったらそこに料理が出てくるという形で提供したこと、ボランティアの人たちに「おもてなしの心」で接したことを紹介した。こうした声に対し、災害復興制度研究所副所長の山泰幸教授は「地域力の減退によって、田舎であっても、つながりがない人は多い。つながりは勝手にできるものではなく積極的に『つなぐ』ということを意識する必要がある」とコメントしました。
室崎益輝・兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長は「災害が多発する時代になり、災害に向き合う新しいシステムを作る必要がある。民間主体で受け入れシステムを作って行政と連携することが重要で、専門的な団体と地域の人が連携すると大きな力になる」「被災地では、ボランティアを必要とするか、一人ひとりの被災者の気持ちを第一に考えることが重要。行政が大変なので来るなというのではいけない。被災者の思いをしっかり受け止めて活動することが基本で、変えてはならないことだ」と強調しました。
2日目の9日は、「地球異変に立ち向かう~社会再生と人間復興に向けて」をテーマにししたシンポジウムを開催。最初に特別講演として、環境活動家の露木志奈さんが「Z世代が思う地球の今」と題し、インドネシアやブラジルでの森林伐採と私たちの生活が結び付いている事実や温暖化対策への取り組みが不十分なことなどを訴えました。続いて、基調講演として、前比較文明学会会長の原田憲一・前至誠館大学学長が「災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候」というテーマで、地球規模の問題として語りかけました。
その後、「水害から一人一人の復興を可能にする制度づくりへ向けて」と題してパネル討論。阪神淡路大震災後に仮設住宅で「孤独死調査」を実施し、現在は豪雨災害のあった熊本県人吉市で支援活動を続ける高林秀明・熊本学園大学教授、震災被災者の法的支援を続けてきた津久井進・弁護士、同じ地域で2度の水害に見舞われた佐賀県武雄市の小松政・市長、災害復興制度研究所の斉藤容子・主任研究員(准教授)が、住宅再建や流域治水など、災害からの復興の今後に向けた課題について話し合いました。
※復興・減災フォーラムの内容につきましては、1月15日付の朝日新聞特設面で紹介されています。
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更新日:2022年01月17日