【兵庫医科大学】~世界初! 定説を覆す発見~ 神経伝達の新たなメカニズムを解明(兵庫医療大学・兵庫医科大学 共同研究)
【兵庫医科大学WEBサイトより転載】
兵庫医療大学(神戸市中央区、学長・藤岡 宏幸) 薬学部 助教の神田 浩里(ひろさと)、兵庫医科大学(西宮市、学長・野口 光一) 解剖学 主任教授の野口 光一、アラバマ大学バーミングハム校 ジャングオ・グー教授らの研究グループが、神経線維の活動電位における新たなメカニズムを解明しました。
神経線維を電気が伝わるメカニズムは、生物学において根本的かつ非常に重要であり、これまではノーベル生理学・医学賞を受賞したアラン・ロイド・ホジキン博士が発見した神経の電気的興奮のメカニズムが定説とされてきました。しかし、今回の研究で、プレッシャークランプとパッチクランプを合わせた新たな手法を用い、哺乳類の有髄神経のランビエ絞輪部※1では、この定説と異なることを発見しました。
神経線維が電位依存性のカリウムチャネルに依存せず、「K2Pチャネル(two-pore型カリウムチャネル)」を使用して効率よく伝導していることを発見したのは世界で初めての事です。
この伝達メカニズムとK2P受容体の役割を解明したことにより、これまで難治性とされてきたギラン・バレー症候群や多発性硬化症などの脱髄性疾患に対する新たな治療薬の創薬に繋がることが期待されます。
※1.神経線維を覆う2つの絶縁性の鞘の間のスペースの事で、電気的興奮が隣のランビエ絞輪まで飛ぶように伝わる跳躍伝導を起こす部位
本研究成果に関する論文は、10月17日(木曜日)に、著名な国際科学雑誌 「Neuron誌」の電子版に掲載されました。
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研究の背景
神経の活動電位の発生のメカニズムは、アラン・ロイド・ホジキン博士により、イカの巨大軸索を用いた研究によって発見され、現在このメカニズムは生物学一般、または高校生物の教科書においても紹介されている。また、このメカニズムは活動電位が神経線維を伝わるメカニズムの説明としても広く知られており、神経科学界では変わることのない根本的なコンセンサスである。
今回の研究では、哺乳類の有髄神経の活動電位の伝導(跳躍伝導)はホジキン博士の発見したメカニズムと異なることを発見した。しかしこれまで、この現象が発見されなかった経緯としては、イカの巨大軸索に比べて哺乳類の神経線維は1/500ほどの大きさであり、パッチクランプ法(直接的に神経の電気活動を計測)を行うのが実験上不可能とされてきたためである。よって、現在でも哺乳類の神経伝達方法は50年前にイカで発見されたメカニズムを用いて説明されてきた。
今回新たな手法として、プレッシャークランプとパッチクランプを組み合わせた方法を用いることにより、哺乳類の神経線維から安定して記録する技術を世界で初めて開発した。
研究者の声(兵庫医療大学 薬学部 神田 浩里)
本研究では、哺乳類の有髄神経においてパッチクランプ法を成功させたことにより、ランビエ絞輪における活動電位の新たなメカニズムが明らかとなりました。
本研究から得られた知見として、神経線維の電気的興奮のメカニズムという生物学における基礎的な仕組みを解明したことにより、今後神経科学一般に新たなメカニズムとして影響する可能性が考えられます。
また、今後の可能性として脱髄性疾患など神経線維の病変を起こす病気の治療や解明に繋がることを期待しています。
兵庫医科大学 野口 光一 兵庫医療大学 神田 浩里
アラバマ大学 グー教授
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更新日:2019年10月29日