【兵庫医科大学】大腸の新しい腸管運動メカニズムを発見 (兵庫医科大学・兵庫医療大学 共同研究)

【兵庫医科大学WEBサイトより転載】

大学院 医科学専攻(神経解剖学)博士課程の楊 燕京さんが筆頭著者として執筆した論文が、世界で権威のある医学雑誌の一つである「JCI Insight」に掲載されました。

この研究は、兵庫医科大学 解剖学 神経科学部門 野口 光一主任教授/学長や兵庫医療大学 薬学部 戴 毅教授等との共同研究で行われ、大腸粘膜固有層にいるTransient Receptor Ptential (TRP)A1受容体を発現した間葉系細胞が大腸腸管運動を制御するという新しい生理学的メカニズムを発見したと発表しました。詳細は、下記をご覧ください。

筆頭著者の楊 大学院生

筆頭著者の楊 大学院生

論題

TRPA1-expressing lamina propria mesenchymal cells regulate colonic motility

楊 燕京、王 勝蘭、小林 希実子、郝 永彪、神田 浩里、近藤 隆、小暮 洋子、山本 悟史、李 軍祥、三輪 洋人、野口 光一、戴 毅

 

概要

兵庫医科大学と兵庫医療大学の共同で行った本研究にて、大腸粘膜固有層にいるTransient Receptor Ptential (TRP)A1受容体を発現した間葉系細胞が大腸腸管運動を制御するという新しい生理学的メカニズムを発見しました。また、潰瘍性大腸炎に伴う腸管運動の異常にも腸管内の間葉系細胞が重要な役割を担うことが証明されました。

 

研究の背景

腸管運動のメカニズムとしては、古くから自律神経による運動調節が知られてきました。近年では小腸腸管運動の調節には、非神経性の粘膜上皮EC細胞は腸管内の環境変化を感受し、TRPA1を介して運動を調節することが明らかとなってきています。一方、大腸粘膜上皮のEC細胞分布は小腸より少なく、大腸腸管運動への関与は不明でした。

また、潰瘍性大腸炎は「指定難病」の一つで、患者数は年々増加傾向にある一方で効果的な治療法が確立されていません。腸粘膜にできる潰瘍や腸管運動の異常により、症状として下痢や腹痛、血便を引き起こします。

 

研究手法と成果

まず、大腸内に腸管運動を記録するための圧センサーを留置し、生体における腸管運動の記録を行いました。その結果、TRPA1の受容体作動薬であるAITCの投与により腸管運動が誘発されることが明らかとなりました。
次に、腸管内のTRPA1やCOXの局在をin situ hybridization法を用いて調べたところ、腸管の粘膜下にいる間葉系細胞が特異的にTRPA1を発現することを突き止めました。間葉系細胞におけるCOX2の発現も確認しました。

さらに、間葉系細胞はProstaglandin E2を放出することによって、腸管運動の調節を行っていることを発見しました。潰瘍性大腸炎モデル動物を用いた研究では、大腸の間葉系細胞が増殖し、TRPA1の発現が増加しました。モデル動物の大腸腸管運動の異常性に間葉系細胞のTRPA1を介したメカニズムが重要であることを明らかにしました。

 

研究費等の出処

科学研究費助成金、学校法人兵庫医科大学中医薬孔子学院研究費、両大学共同研究費など

 

今後の課題

腸管運動のメカニズムとして、間葉系細胞TRPA1が関与する事は新たらな発見であり、これらのタンパクもしくは細胞をターゲットとした新たな治療薬の開発が期待されます。

 

掲載誌

JCI Insight(電子版) (May 2, 2019)
 

(2019年5月31日)

 

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更新日:2019年06月04日